day9
趣味が違うところもある。だって全く同じ人間なんていないし。世界だってばらばらのまま。広いけど人が多いホールで、私たちは決断に迫られていた。もうすぐ予告が始まるであろう時間、どの映画を観るかで意見が割れている。割れていると言うか、二人ともどっちもいいから困るね~状態。決まらないまま買ってしまった大きめのポップコーンがやけに重く感じる。結局今日のところは私の観たいといった方を見て、また近いうちにもう一本を観に行こう、というあなたの提案に最高だねと乗っかる形になった。また一緒に出かけられるんだなと嬉しくなる。片手でなんとかポップコーンを抱える私と、飲み物を2つ持つあなた。腕を組んで早歩き、上映開始まであと10分。
day8
部屋を暗くして、月の形に似た灯をともす。さっき入れた日本酒の中で氷が回り、カランと音がする。最近あったこと、これからのこと。ぽつりぽつり、あなたと私、順番に話す。素敵なものを見つけたこととか、ちょっとおっちょこちょいをしたこととか、そろそろどこかに出かけようかとか。そんな話をほんのり紅い顔でする。窓を開けても気持ちがいい季節になったなぁ。私が伸びをしながら言うと、同意の声と一緒にあなたはクッションに頭を乗せ横になる。あなたとお揃いの紅い顔で寝顔を眺め、静かに日本酒を煽った。
day6
二人並ぶのにちょうどいいキッチン。休みの日の楽しみ、私が刻む野菜の音を聞きながらそっとあなたはそれを入れる器を差し出す。次は何をしましょうか?なんて顔をしているから、こういう時間にぴったりの音楽をかけてと頼んでみる。ピアノ曲や懐かしい曲、織り混ざったプレイリストに包まれながら、彩り溢れる具材をフライパンに放り込んだ。塩胡椒の加減をみてると控えめに差し出されたコップに注がれたチューハイ。休日だしいっか、と二人で乾杯する。私はフライパンから目を離してることに気づき慌て、あなたは食器の支度をする。できた!と私が言った時、後ろでカシャリと音がした。振り返るとまたカシャリ。ランチを盛り付けて、またカシャリ。冬の割には暖かい日差しが漏れる部屋で、いただきますをした。
day5
少しガタつくベンチに座って、あなたを待つ。朝のしんとした空気に背筋も伸びる。リュックの中の持ち物の確認は10分前にしたし、あなたが勧めたガイドブックの要所も今さっきチェックしてポケットにしまった。なので背筋を伸ばしてあなたを待つだけなのである。あなたと遠出するのはこれで3回目、あなたの事まだまだ知らないところも多くて、だからこそ旅の途中で見つけるのが楽しみで。色々な思いを巡らすことができる、ホームでの待ち合わせもそんなに悪くはない。突然後ろからぽんと頭に手が置かれる。待たせましたか?と少し申し訳なさそうにするあなた。いいえ、わたしが15分早く着いたから。だって今日は遠くの海を見に行くんだもの。